高発熱密度の電子機器の冷却や浸漬型の蒸気発生器などへの応用を目的とした、低液位や制限空間における伝熱促進について、本年度は特に影響因子の検討を中心に実験的研究を行った。 1.低液位沸騰では、その伝熱促進に影響を及ぼす諸因子について、とくに伝熱面への液体の供給の観点から検討を加えた。その中で伝熱面ほど低熱流束領域で蒸気ド-ムの形成による伝熱促進が大きいことが明らかになった。これはドライアウト発生期間が相対的に短いことによる。さらに1mm程度の低液位の限界熱流束は、小さい伝熱面では液位が充分ある場合に比べて1.5倍にも達する。これは、プ-ル沸騰でバ-ンアウトを引き起こす原因となる大きな二次気泡が、低液位では形成されず、常に安定した液体の供給が、伝熱面の周囲から中心向かって為されるためである。 円錐形伝熱面を用いると、より液位の低いところでも安定した沸騰を持続できるという利点がある。また、限界熱流束は円錐形伝熱面を用いることで増大させ得るが、増大率はあまり大きいとはいえない。 2.制限空間の沸騰では、多孔干渉板を用いた実験から、適当な穴径の組合せとすきま間隔により、小湿度差でいわゆる高性能沸騰伝熱面に匹敵する光熱流束が得られることが明らかになった。 以上の2項目について伝熱促進効果と適用限界を実験的に明らかにしてきたが、ここで対象とした液体は純粋に限られており、今後とくに表面張力の異なる液体に対する検討が必要であろう。
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