申請時点では鉛直面と水平円柱系について計画された本研究は、以下の理由により水平円柱系に重点が置かれて実施された。即ち、水平円柱まわりの自然対流膜沸騰熱伝達ではその直径に応じ、層流蒸気膜・平滑界面膜沸騰、層流蒸気膜・波状界面膜沸騰、および蒸気膜曲率効果の大きい(つまり境界層近似が妥当でない)膜沸騰といった、自然対流膜沸騰において出現し得る全伝熱機構が問題となり、自然対流膜沸騰熱伝達の全体像を明らかにする上で最適な系である。 まず、層流蒸気膜・平滑界面を持った膜沸騰が出現する中直径域については、サブクール度の効果を含んだ積分形二相境界層方程式を解析的に解き、この解がより厳密な微分形(変物性)二相境界層方程式の数値解と極めてよく一致することを示した。 次に実験的には以下の結果を得た。まず大気圧飽和水の膜沸騰実験を直径2〜70mmの水平円柱について行い、飽和膜沸騰熱伝達および気液界面挙動の直径依存性を明らかにし、上述の解析値より熱伝達率が大きくなる大値径域20mm程度以上の直径域で出現することを示した。次に、大気圧サブクール水の膜沸騰実験を同様の直径範囲にわたり、サブクール度10〜40Kについて行い、上述の飽和膜沸騰では大直径域に属する円柱直径では膜沸騰熱伝達率がサブクール度の増大に対してそれ程増大しなくなることを示した。また気液界面もサブクール度の増大とともに波状から平滑化することを大直径域について示した。以上の結果は、以前西尾らが示した長い蒸気膜を有する自然対流飽和膜沸騰モデルを暫定的にサブクール膜沸騰へ拡張することにより少なくとも定性的には説明され気液界面の不安定性を考慮した長い蒸気膜を有する膜沸騰モデルがサブクール条件下においても成立し、その統一的把握。
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