水-氷間に介在する凍結潜熱を利用し、氷蓄熱を構成要素として導入した冷凍あるいは冷房システムの高効率化のための基礎研究として、蓄熱システムの要素技術として重要な、蓄熱槽内の基本的現象の数値シミュレイションおよび実験計測による解析を行い、下記の成果を得ている。 (1)基本的な伝熱面形状として、垂直におかれた平面の伝熱面による凍結・融解について昨年度に引続き数値シミュレイションを行い、蓄冷(凍結)では、初期水温が10℃程度以下では自然対流は蓄熱槽の冷却速度にほとんど影響しない。しかし、放冷(融解)時には伝熱面温度が高くなるにつれて流れの影響が顕著になる。伝熱面温度が8℃のとき液層を縦に分ける大きな2つの互いに逆向きの渦が生じ、氷の融解速度は最低になる。これ以上の伝熱面温度での融解では、温度が高いほど氷の上部に融解の深いくびれが生じ、流れの強さも上部で強く、下部で弱い偏った流れになる。 (2)水平円管まわりの凍結では、初期水温が4℃以下では冷却管に沿う上向き流れで、氷は冷却管から上側に卵型に成長する。初期水温4℃以上では冷却初期に短時間冷却管に沿う強い下向き流れが生じる。時間の経過と共に管下側に小さな逆向きの流れが生じ、次第に発達して2つの方向の流れが共存する時期を経て、蓄熱槽の下側から温度成層化し、熱伝導支配の時期になる。この場合の氷形状は上下何れの方向にもほぼ偏りはみられない。 空気泡吹き込みによる流れの付与は、初期における顕熱蓄熱の蓄熱割合を高めるので、短期特性には有効である。しかし、IPF10%を越す蓄熱利用では流れの蓄熱特性に対する寄与は小さい。
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