本研究では、双腕のマニピュレ-タがひとつの対象物を両手で保持し、運搬するという問題を位置と力のハイブリッド制御の枠組みでとらえ、運動学、静力学の観点よりシステム理論的に論じた。そして、ハイブリッド制御のための作業座標として、内力空間と外力空間を定義し、各空間における位置、速度、力を導いた。さらに、対象物のロバスト保持の条件を理論的に検討し、左右の手に対する負荷分配のアルゴリズムを提案した。そして、以上の結果を実験により検証した。本研究の成果は以下のように要約される. 1.両手で対象物を保持した状態について、運動学、静力学の観点からシステム理論的に解析を行い、内力空間と外力空間を定義した。この解析では、仮想ステッキという新しい概念を導入することにより、内力空間と外力空間に対して、位置、速度、力を矛盾なく定義することができた。 2.以上の内力空間と外力空間の位置、速度、力を作業座標とする位置と力のハイブリッド制御方式を、両手の協調制御のための新しい制御方式として定式化し提案した。 3.以上の理論的な枠組みの中で、左右の手への負荷分配問題を論じ、この問題を外力計算のための一般化逆行列を求める問題として位置付け、負荷分配係数を含む新たな一般化逆行列を定義するとともに、より一般的な理論体系を構築した。 4.対象物を頑強に保持する問題、すなわちロバスト保持の問題を、負荷分配係数を決定する問題という観点から理論的に検討し、ロバスト保持のための負荷分配係数決定アルゴリズムを導いた。 5.以上の理論的な結果を、各腕4自由度の直交座標型産業用ロボットを用いた実験により検証した。
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