研究概要 |
昨年度までは,直列型層状構造物,二,三次元樹状構造物および可変パラメ-タ系の自由振動解析に重点を置いて研究してきた。本年度は,自由振動解析における伝達影響係数法の利点である高速高精度計算手法を十分に生かして,線形強制振動応答解析および非線形振動解析手法の開発を行った. まず,直線状構造物の面内曲げ線形強制振動応答解析を定式化した。自由振動解析において,伝達影響係数法の欠点は振動数方程式中に極が存在することである。しかし,線形強制振動応答解析を行う場合,その極をまったく意識する必要はなく,自由振動解析よりも取り扱いが簡単である.また,伝達過程の1つは,左端から右端への,いわゆる内力に対する動的影響係数マトリックスの伝達と外力に対する応答ベクトルの同時伝達の過程からなる。これらを同じ係数行列を有する連立方程式で解く.各節点の変位ベクトル,カベクトルは,逆に,右端から左端へと順次求められる.強制振動解析においても伝達影響係数法の高速高精度を確認することができた。 伝達影響係数法の概念を非線形振動応答解析に適用した。調和バランス法と伝達影響係数法の概念を,増分法を用いて結合・統合した増分伝達影響係数法を新たに提案し,非線形要素を含む最も基本的な直列型振動系にそれを適用した.また,同時に,得られた定常振動解の安定性を能率的に判別するための手法について提案した。本手法は,非線形系の定常振動応答を望む精度で,しかも高速に計算できるアルゴリズムを有し,とくに,非線形大規模多自由度系で高精度応答解を求めるのに適していることが判明した.数値計算の対象として,断片線形系の非線形振動を高速高精度に取り扱えるように,高速フ-リエ変換の利用とは異なる直接的な手法を試みた。これに関しては,鋭意研究中である。
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