本研究は、柔構造システムの位置決めおよび振動制御のための機構として、テンドン機構の採用を提案し、その有効性について検討を行った。具体的には、制御対象として1リンク弾性回転アームを取り上げ、これに小さいモーメントスティックを装着し、これとモータ軸に結合された駆動スティックを張り線で結び付けたテンドン機構を考案し、その位置決めおよび振動制御問題を考察した。 モデリングにおいては、弾性回転アームをはりモデルで置き換え、張り線すなわちテンドン駆動モータの動特性とテンドンの弾性を考慮した上で制御系全体の線形な数学モデルを導出した。そして、最適制御のための評価関数として、位置決め位置からの二乗誤差をはり全体にわたって積分した量と制約条件としての最大応力点での応力、モータの電流、操作電圧それぞれの二乗値の重み付き和を採用した。制御系の設計は、著者が既に提案しているスピルオーバを考慮する最適化手法を適用した。 以上の制御系設計の方法を基に、まず制御特性について計算機シミュレーションを行った。その結果、従来のようなアームの端点に取り付けられたモータによって直接駆動する方式に比較して、テンドン機構を用いた本制御手法は位置決めの過渡状態においてアームのたわみを極めて小さく抑えることができることが示された。さらに、モーメントスティックの装着場所によって制御性能に大きな差が生じることを示し、その最適位置についても考察を行った。 さらに、本手法の有効性を実験的に調べるために実験模型を製作して、制御実験を行った。検出量をはりのひずみ、モータの回転角度、その角速度、その電流、アームの回転角度とし、6msのサンプリング周期による90度回転のディジタル最適位置決めの制御実験を行い、本手法の有効性を実験的にも明らかにした。
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