培養した幼苗(茎径1mm前後、長さ25mm前後)を新しい寒天培地に移植するロボット(メリクロンロボット呼称)を開発した。本試作ロボットハンドは動作機構として平行リンク方式を適用し、アクチュエータに形状記憶合金(線径0.4mm)を用いているのが特徴である。これにより幼苗を傷付けずソフトに把握し、寒天培地から植え出し、新しい寒天培地へ植え付けることが可能となった。また、苗把握や、植え付け、植え出し時における動作量あるいは力の制御は形状記憶合金の通電量をパルス幅変調方式で変化させることにより幅広く対応できることを実験により確認した。また、苗移植の高速化を図るため、ハンドを取り付ける直交座標型のアーム移動をベルト駆動とした。苗の位置検出は、寒天培地に微弱パルス電流を流すことにより、苗から発信される電波をハンドに取り付けたアンテナにより受信して行われる。アンテナ形状は、指向性の最も良い形状を実験により決定した。また、この銅箔アンテナを多チャンネル化することにより、植物の形態を電波像として捕らえるとともに、生体内部情報の検出の可能性について調べた。苗の成育状態(長さ、色)の判定には、RGB出力タイプのカラーセンサ素子を縦に6個配列し光源、スリットを組合わせたコリメータ的な装置を試作した。以上のそれぞれの試作装置を統合し、かつユニット化することにより、多段に搭載できる実用レベルの全自動苗移植システムを実現した。制御システムはホストコンピュータに補助金で購入したパーソナルコンピュータを用いた。また、ユニット単体に自律性を持たせた。また、パソコン通信による遠隔地からのシステム操作を試み成功した。一方、上記とは別に、カルス細胞塊の植え継ぎに形状記憶合金アクチュエータを適用したペンシル型構造の4本指ハンドを試作しその性能を調べた。いずれの場合も、無菌維持のため購入した卓上クリーンベンチ内で移植実験を行った。
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