本研究は、高磁界で高電流密度を維持できる複合多芯超電導線材を設計するための基礎研究として、極細多芯超電導線のフィラメント径およびフィラメント間隔とピンニング力の関係、交流損失の変化、近接効果の影響を実験と理論の両面から明確にすることを目的とする。 本年度は、Nb_3SnやNbTi系多芯線試料の高磁界までの臨界電流密度Jcと、その温度依存性を測定する計画であったが、入手可能な多芯線は太く、通電電流が大きくなり、外部リード線と超伝導線との接合個所での発熱が大きくなってしまった。そきため、既存の断熱セル空間を利用して温度制御をしながらJc測定を行うことが困難であり、断熱セルを改造している。また、接合個所で発生するジュール熱の影響を極力抑えるため、パルス的なJc測定が望ましいと考え、パルス電流発生装置を試作し、NbTi線材やNbN超電導薄膜について装置のテストも兼ねて、4.2KでJc測定を行った。以下に試作したパルス電流発生装置と測定結果について示す。 1.パルス電流発生装置:本装置は、超伝導体に流す電流をスイープし、常伝導転移した際に生ずる発生電圧を検知すると共に、試料保護のため電流スイープを停止し、測定系をとりセット状態に復帰させるものである。試作した装置の性能として、電流スイープ最大速度5A/S、検出可能最小電圧100μV、電流容量5Aの値が得られた。 2.Jc測定結果:NbTi線、NbN超電導薄膜試料について、通電電流のスイープ時間および試料端に発生する電圧の検出感度をパラメータとして計測した。その結果、1秒以内の高速度電流スィープの場合にはJc値が高く見つもられること。またこの原因として試料の常伝導転移状態での抵抗値が関与していることが明らかとなった。
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