本研究では、高磁界で高電流密度を維持できる複合多芯超電導線材を設計するための基礎研究として、多芯線のフイラメント径とよびフイラメント間隔とピンニング力の関係、交流損失の変化、近接効果等の影響を実験と理論の両面から明確にすることを目的として計画を進めてきた。 本年度は、昨年度に引続き交流超電導線における臨界電流密度の温度依存性を精確に、かつ効率良く測定できる装置の完成に重点を置いた。多くの交流超電導線では電流容量で〜10A程度のものが最も小さい部類に属するため、本装置の発生電流容量をこれまでの5Aから20Aまで測定できるように改造した。このような高電流容量をもつ交流超電導線を4.2Kから20Kまで温度可変できる断熱セルの設計・製作を行った。以下に製作したパルス電流発生装置を使い、測定したNbTi線の4.2Kでの臨界電流密度の磁場依存性と断熱セルの性能について示す。 1.NbTi交流線のコイル状試料に種々のスイ-プ速度でランプ状電流を流して測定した結果、各磁場での臨界電流値Icを0.2秒以上の時間をかけてスイ-プした場合に得られたIc値は、準静的に測定したものと一致する。0.2秒より短い時間でスイ-プにより交流超電導線(最大20A)のJc測定が可能であることが示された。 2.断熱セルを構成し、液体ヘリウム中で温度制御特性を測定した結果、4.2Kから20Kの範囲で正確な温度制御を行なえることが確認できた。しかしながら、試料に定常的に数A程度の電流を流した場合、断熱セルに温度上昇が見られ、なお改善の余地がある。
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