提案した新方式インバータシステムの解析と設計及び装置の試作を今年度計画していたが、ほぼ計画通りに実施することができた。その結果提案した着想が基本的には正しいこと、さらに詳細に検討してシステムを改善することにより、低損失、低ノイズ、小形・軽量などの特長をもつ新しいインバータシステムが実現できる見通しが得られた。そこに至るまでに得られた新しい知見は下記の通りである。 1.シミュレーションによる検討結果(1)スイッチング周波数 正弦波合成の単位波形となる三角状波形を発生する場合、それに含まれる高調波のうち、1〜1.5KHzまで再現できれば、十分良好な波形の50Hz出力を合成できることがわかった。比較的低周波スイッチングで間に合うために、提案方式が大容量化の可能性をもつことを意味している。(2)高周波インバータ出力のパルス幅と電流値を対応させる場合に、電流のピーク値と対応させるよりも、実効値と対応させた方が最終出力波形のひずみが小さいことがわかった。(3)パルスパターンを適切に設定することによりシミュレーションでは非常に良好な出力波形が得られることを確認した。 2.実験的検討結果 パワーMOSFETをパワーデバイスに用いた二重接続形高周波リンク方式三相インバータを試作した。実験では、メモリーに書き込んだパルスパターンのデータに問題があったために出力波形にひずみが生じたが、提案方式の考え方の正しさを実験的にも検証することができた。出力波形のひずみの問題は、パルスパターンの改善により十分改善できる見通しがある。 3.今後の課題 電流フィードバック制御系の付加による動特性の改善と出力波形の最適化を実施する予定である。
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