本研究は、風力エネルギーの利用を意図し、小形、堅牢、安価な誘導発電機と電圧形PWMコンバータを組み合わせた新しい発電システムについて理論的、実験的検討を行ったもので、発電効率の向上、電力系統側の出力電流波形改善などのシステムの特性改善を行うと共に、これを風力発電に応用する場合の最適な制御法を明らかとすることを目的とした。本研究の主な成果は以下の通りである。 1.電力系統に力率1の正弦波電流を供給するために、系統側PWMコンバータにキャリア周波数成分除去用のLCフィルタを挿入した。この際、過度時のLCフィルタの共振が問題となったが、フィルタの状態量を帰還してPWMコンバータの制御を行ない、良好な電流波形を得た。さらに、理論的解析によりこの帰還利得の最適設定法を明らかとした。 2.系統側コンバータの直流側電圧利用率の向上を図るため、各相の電圧指令値に零相分を付加する方式を採用した。この際、状態帰還制御を支障なく行うために零相分を瞬時に合成して付加する方式とし、出力電流の歪みを伴うことなく電圧利用率を12%改善した。 3.発電機側コンバータには、瞬時トルクの制御が可能なベクトル制御を採用した。一般にベクトル制御には速度センサが必要であるが、特に風力発電という屋外用途であることを考慮して速度センサを用いない構成を研究した。この際、風力発電では誘導発電機が回転状態にあるときにシステムを始動させるため、始動時の回転数把握が問題となったが、残留磁気による発生電圧の周波数から回転数を推定する方式を採用し、始動を含めて安定な動作が実現できた。 4.風車を模擬する風車シミュレータにより誘導発電機システムを駆動し、定常状態、過渡状態における各種のデータ収集を行い、実用性の検証を行った。
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