昨年度、設計製作したビ-ム発生用電源であるマルクスジェネレ-タと集中定数素子を用いたパルス形成線路、磁界発生用のソレノイドと励磁用パルス電源のそれぞれの機能試験を行った後、これらと電子銃とを組み合せて電子ビ-ムを発生させ、特性試験を行った結果、以下のような成果が得られた。 マルクスジェネレ-タと集中定数素子を用いたパルス形成線路の機能試験では、マルクスジェネレ-タのトリガ-系の問題から、パルス形成線路の整合負荷(100Ω)への最大出力電圧は70kV程度であったが、パルス幅600nsの方形波出力が得られた。その出力波形は数値シミュレ-ション結果とよく一致し、集中定数素子を用いたパルス形成線路の設計に当たって、相互インダクタンスやコンデンサの自己インダクタンスを無視できないことが明らかになった。磁界発生用ソレノイドの励磁用パルス電源の機能試験では、当初の予定を変更してソレノイドを電子銃部とドリフト部に分割し、電源コンデンサもそれぞれ独立させて別個に制御できるようにした。この結果、最大磁界強度5.7kGが得られ、磁界強度分布の制御性を格段に向上てきた。これらの装置を接続してビ-ム発生実験を行い、最長パルス幅300nsのビ-ムが得られ、感熱紙によるビ-ム形状の観測から円筒ビ-ムが生成されていることが確認された。プラスチックシンチレ-タを利用したダイオ-ド部からのX線測定から、陰極から放出された電子の一部が陽極に衝突していることが確められ、ロゴスキ-コイルによる測定からダ-オ-ド電流の1/3程度がビ-ム電流になっていることがわかった。さらに、高速度カメラにより、陽極側からプラズマ進展が起こり、ダイオ-ドの短絡に至ることが観測された。ビ-ム電流はまだ空間電荷制限電流を越えていないため、今後、ビ-ム電圧の増加により、ビ-ム電流の増大を行う予定である。
|