本研究は、負極性雷雲による多地点同時雷撃現象解明の1つの手がかりとして、雷雲を平板電極で、地上の鉄塔等を複数の背後平板付棒電極で模擬し、複数放電の発生条件と発生機構を検討する。 実験には、線条又は膜状コロナを経てフラッシオーバに至る棒電極直径が4mmの場合と、コロナ発生直後フラッシオーバに至る棒電極直径が20mmの場合との比較のため2種類の棒電極を用いた。結果は、 1.ギャップの長さ(D)を5cmとし、棒電極間隔(H)を変化させた場合の複数フラッシオーバ発生率を求めた。その結果、(1)棒電極直径が4mmの場合、D/H≧2では、2本の棒電極からそれぞれ別経路をどたるII形フラッシオーバが発生し、D/Hが小さくなると、2本の棒電極からの放電路が途中で1本となり平板電極に至るh形フラッシオーバが多く発生する。(2)棒電極直径が20mmの場合、D/Hが2以上ではII形フラッシオーバが発生しなくなり、D/Hが2より小さいところでは、直径4mmの場合と同じ傾向である。 2.棒電極が1本の場合のフラッシオーバに対する棒電極が2本の場合のフラッシオーバ電圧の変動率ΔVとD/Hとの関係を求めた。その結果、(1)棒電極直径が4mmの場合、D/Hが小さくなるとΔVは大きくなる。これは、棒電極間隔がせまいところでは、お互いの棒電極の印加電界による電界緩和作用(有限要素法により電界分布の変化を求めた)が働くことと、コロナ放電による空間電荷の電界緩和作用のためである。(2)棒電極直径が20mmの場合のΔVは、直径4mmの場合に比しD/Hが小さくなると小さい。これは、直径20mmの場合、コロナ安定化領域が存在しないため、印加電界による電界緩和作用のみが働くためである。 となる。以上は鉄塔が平地にある場合を想定したが、次年度は山の斜面にある場合を想定して、2組の平板対棒電極を用いて検討する。
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