多地点雷撃現象解明の1つの手がかりとして、雷雲下層の負電荷と複数の鉄塔との間で多地点雷撃が発生する場合を想定し、平板対2本の棒電極からなるギャップに同極性直流電圧を印加した場合の放電形態について、検討した。その際、雷雲下層の負電荷の拡がりを模擬した直径1mのロゴウスキ-電極と鉄塔を模擬した2本の棒電極からなるギャップに、一定電圧上昇率5KV/sの負極性直流電圧を印加して、フラッシオ-バさせた。棒電極には膜状コロナを経てフラッシオ-バに至る直径4mmのものと、コロナ発生直後フラッシオ-バに至る直径20mmのものを用いた。その結果、直径4mmの場合、棒電極間の間隔Dと棒電極と平板ギャップの長さHとの比D/H1.2では、ほとんどそれぞれ2本の棒電極と平板電極との間で生じるII形フラッシオ-バが現われる。D/Hが小さくなると、2本の棒電極からの放電路がギャップの途中でいっしょになったh形フラッシオ-バが多く発生する。一方、棒電極直径20mmの場合、1.6<D/H<2.0でII形フラッシオ-バが多く発生し、D/Hがさらに小さくなるとh形フラッシオ-バが多く発生する。これは、膜状コロナの安定化領域が存在する直径4mmの場合D/Hが小さいところでは、棒電極接近によるお互いの棒電極先端近傍への電界緩和作用と、コロナ放電より発生した正の空間電荷群による電界緩和作用のためである。また、膜状コロナの安定化領域の存在しない直径20mmの場合、空間電荷群による電界緩和作用の影響が現れないからである。
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