湿潤汚損面を模擬した電解質水溶液に入れた箱の底に直径1mmのタングステン棒からなる20本のプローブを1cm間隔で針一平板電極方向(局部放電の進展方向)に対して直角に置いた。これらのプローブによって、針一平板電極間に雷インパルス電圧を印加したとき針電極から発生する局部放電が溶液面上のある点まで進展した瞬時の溶液の底面での電位分布を測定した。この電位分布の測定をいろいろと実験条件を変えて行った。次に局部放電と溶液面との接触点を半球電極(真ちゅう製円筒の先端を半球状にしたもの)で模擬した。すなわち半球電極の半球部分を溶液中に浸し、それと平板電極間に上と同じ雷インパルス電圧を印加し、溶液の底面での電位分布を測定した。針一平板電極方向に半球電極を1個、2個、3個、5個配置した4種類の場合について調べた。半球電極1個の場合は局部放電先端と溶液面、2個の場合は局部放電の両端(局部放電先端および根元)と溶液面、3個の場合は局部放電の両端および幹部分中央点と溶液面、5個の場合は局部放電の両端および幹部分の3点と溶液面との接触を模擬する。これらの半球電極を使用した場合の溶液の底面での電位分布と先に求めた局部放電進展時の電位分布とを比較、検討した。その結果、雷インパルス電圧印加のもとでは、局部放電の進展距離、電極間距離および印加電圧波高値は局部放電と湿潤汚損面との接触状態に影響しないこと、ならびに局部放電部分での電位降下が無視され、局部放電全体が同じ電位にある場合、局部放電と湿潤汚損面とは局部放電に沿って多数の点で接触しているとみなされることが判った。 今後、プローブの改良および溶液の底面での電位分布の計算を行うとともに、局部放電の接触状態に対する印加電圧波形の影響などについても詳しく検討する予定である。
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