研究概要 |
電力系統の安定性を解析する際、発電機の鎖交磁束減衰を考慮した系統モデルのリアプノフ関数を構成しなければならない。しかしながら、鎖交磁束減衰効果により、発電機の入出力特性式は相差角変化と磁束変化による積形の非線形関数として与えられる。この積形関数はセクタの設定が容易でなく、導出されるルーリエ形リアプノフ関数Vとその時間導関数V^^・の定値性の確立を困難にすることが知られている。本年度の研究では、積形非線形関数のセクタの設定法について開発し、一つの拡張リアプノフ関数構成法を確立した(昭63年電気関係学会九支連大、No.125、計自学会論文集、Vo1.25,No.2,1989).また、発電機の動特性式が2階の常微分方程式で記述されることに着目し、これをリエナール形非線形システムとみなして安定性の解析を行った。(昭63年電気関係学会九支連大、No.124、計自学会九州支部大会No.107)、一方、リアプノフの直接法を同期発電機の安定度解析へ摘用するため、まず同期電動機を対象に負荷急増時の機器パラメータの過渡安定度に及ぼす影響についてリアプノフ関数を用いて調べた(昭63年電気関係学会九支連大、No.747)さらに、リアプノフ関数から得られる過渡安定度評価と実験結果とを比較検討した。この結果、リアプノフ法は実機の安定度評価に有効であることが示された(昭63年電気関係学会九支連大、No.748)。さらに、電力系統のオンライン評価モデルを作成する際の問題点として、パラメータ同定の正確さの問題が出てきたため、非線形システムの一つのロバスト安定性の指標を開発した(SICE'89',I.J.C.,IEEE,ACそれぞれ投稿中)その他、システムの状態変数である相差角と速度の測定回路を完成させ、実際にマイクロコンピュータで故障回線をしゃ断するためのプログラムもC言語により作成している。故障発生の際にノイズが発生し、これがリアプノフ関数に誤判断させる為、これも検討中である。
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