個体表面における液晶分子の配向は物理的にもデバイスへの応用についても重要な問題であり、数多くの研究が行われている。しかし、その配向力の強さ、すなわち配向エネルギ-についてはほとんど明かにされていない。本研究ではこの問題に焦点を合わせて検討を行い、次のような知見を得た。 1.高分子を塗布した基板表面を布で一方向に摩擦(ラビング)し、この表面が液晶を配向させる力(配向エネルギ-)を光学的に測定する方法を初めて明らかにした。 2.上記の方法で配向エネルギ-を測定し、ラビング条件がそのエネルギ-に及ぼす影響を検討した。その結果、これがラビング密度と密接な関係をもつことを明らかにすると共に、配向エネルギ-を精密に制御する手法を確立した。 3.上記の方法で基板表面の配向エネルギ-を制御し、それが強誘電性液晶の配向に及ぼす影響を検討した。その結果、配向エネルギ-をある臨界値より強くすると共に20V程度の方形波電圧を印圧することによって、これまで極めて困難とされてきた理想的な均一配向(ブックシェルフ構造)の形成に成功した。これによって、マイクロ秒オ-ダ-の高速応答性と良好なメモリ性を有する光デバイスの実現の可能性が示された。 4.上述の配向エネルギ-を支配している表面物性の本質についてはまだ十分な解明がなされていない。この問題は今後の課題である。
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