電子顕微鏡、電子線描画装置等で望まれる高輝度高電流電子源として二硼化タンタル製フィラメントの特性を調べた。直径0.13mmのタンタル線を分圧約0.1Tor.rのジボランと水素の混合気体中で通電加熱することにより硼化しその熱電子放射特性を測定した結果、仕事関数は4.05eVと比較的小さく、加速電圧75kVの電顕に搭載して1x10^6A/cm^2str.とかなり高い輝度が得られたが、高温における蒸発速度が高いため寿命の点でタングステンには及ばないことが分かった。しかし、タングステンのポイントフィラメントに二硼化タンタルの粉末を塗布し、真空中で焼結した新しい陰極では、熱電子源として元のタングステンよりも優れていることが明らかになった。現在、熱電界放出電子源としての特性を測定中であるが、この場合には、酸化ジルコニウム陰極と同様ショットキーシールドが必要なことが分かって来た。また、このフィラメントの場合、タングステンのループへの通電加熱では十分な温度が得られず、ループの断線により寿命を縮めることが多い。そこでNd:YAGレーザー光をオプティカルファイバーで真空中に導入し加熱するシステムを新たに作製して測定を行っている。
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