研究の第1の目的であったスメクチックA液晶の電傾効果に基く分子配向変化を光透過率変化として精度良く測定した。これによって以下の点が明らかになった。 1.理論から予想されるように透過率の変化量は印加電圧の自乗に比例する。 2.理論から予想されるように規格化された透過率の応答特性は印加電圧に依存しない。すなわち高速光モジュレーターとして用いようとする場合、印加電圧を増加することは高速化には本質的ではなく、実効的な粘性係数の小さな材料の開発が必要であることがわかった。 3.電場を印加した時の透過光の応答特性は理論から予想されるような単一指数関数にはならず、少なくとも二成分以上の指数関数で表わされる。このことは電場印加時に分子の傾き誘起のみではなくスメクチック層の変形を伴っていることが示唆される。 3の結果をふまえ、スメクチックA相での層変形の基礎的なデータを得るためにホモジニアスセルを用いてX線回折実験を行った。電場を印加しない場合でもわずかな層間隔変化によると思われる層の「く」の字構造(シェブロン構造)が誘起されるこがわかった。すなわち、ネマチック-スメクチックA相転移直後ではほぼブックシェルフ型の層構造を持つが、温度の低下に従い、シェブロン構造が形成される。電場を印加し、電傾効果を生じさせた時には更に大きな層間隔変化が生じるので層の変形も当然予想される。現在、電場印加時の層変形のX線回折実験を行っている。
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