粒状半導体薄膜の製作と評価に関して、本年度新たに2種類の方法を試みて、その両方で半導体単結晶微粒子の形成を確認できた。 第一の方法は、絶縁体としてSiO_2、半導体としてGeからなるコンポジットタ-ゲットから同時スパッタするものである。成膜条件を最適化し、スパッタ後500℃で熱処理を行うことによって、約80Å径程度のGe単結晶微粒子が形成されることが明らかになった。光学吸収の測定結果からも、量子サイズ効果にもとづく吸収端のシフトが観測され、微粒子の存在が確認された。 第二の方法は、ア-ク放電法によるSi微粒子の製作である。減圧N_2下でSi多結晶ロッドを用いてア-ク放電を行って形成された膜について、X線解析、ラマン分光、フォトルミネッセンスの測定を行った。X線回折によれば、Si単結晶によると思われる2θ=28°の鋭いピ-クが観測された。ラマン分光の結果は、ラマンシフト約520cm^<-1>にピ-クが見られ、そのライン幅は単結晶Siのものの約2倍程度の広がりを持ち、ピ-ク位置もわずかに低エネルギ-側にシフトしていた。これらの結果は、SI単結晶が微粒子化していると考えることによって説明できる。また、この膜のフォトルミネッセンスを測定したところ、1.3μm付近にピ-クを持つ強い発光が見られた。この発光はバルクの単結晶Siでは全く見られないものであるから、微粒子化によって生じた新しい現象ではないかと考え、現在実験を継続中である。 また、新たに減圧不活性ガス中での蒸着によって半導体微粒子を製作する実験もスタ-トさせている。
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