本研究では、まずイオンビ-ムスパッタ法を利用した多層薄膜の形成によって絶縁体中に半導体を分散させた構造を実現することを試み、SiやGeの微粒子をSiO_2中に緻密に分散できることを見出した。ただし、この方法では結晶化した半導体微粒子を得ることはできなかった。 そこで本研究の後半では、ア-ク放電法および真空蒸発法で結晶性の良いSi微粒子の形成を試みた。このようにして形成されたSi微粒子は、ラマン分光およびX線回折によって、結晶化していることが確かめられ、また、Arイオンレ-ザによる励起によって強いホトルミネッセンスを生じることが分かった。発光スペクトルのピ-クは約0.8eV付近のサブバンドギャップ領域にあり、微粒子によって高濃度化した表面準位を介した発光であることを示している。一方、このようなSi微粒子を酸化処理すると表面層が約50A程度の均一な酸化膜で覆われることが電子顕微鏡観察によって確認された。酸化膜を有するSi微粒子からのホトルミネッセンスのピ-クは、約1.4eVと、高エネルギ側に大きくシフトし、量子サイズ効果の存在を示唆している。スペクトルの微細構造は励起量子準位間の遷移を考慮することによって説明できることが分かった。 今後の展望としては、3年間にわたる本研究によってSi超微粒子を再現性良く、しかも粒径のそろった状態で製作出来る方法が確立されたので、この系を電子的、光学的デバイスの新素材として応用していく研究をスタ-トさせていきたい。まず第一段階として、非線形光学効果が半導体微粒子で極めて強くなることが知られているので、その測定に取掛かっている。また、溶液中に半導体微粒子を懸濁させた系の光電気化学的性質の測定も始める予定である。いずれにしても、本研究の最終目標が達成された時の学術上の意義は極めて大きいと思われるので、今後数年間にわたって精力的に本研究を進めていきたいと考えている。
|