研究概要 |
前年度の研究結果から結晶性を損うことなく不純物添加をおこなうための種々の改善策を考案し,実験装置にも部分的に改造をした後研究を継続した。それらの主要な点は,(1)最初の計画では固体ソ-スとガスソ-スの併用法を用いたがそれらを全固体ソ-スに統一した。(2)ZnSを原料とする固体ソ-スを用いることにしたため生起しやすいと考えられるZn欠陥を補償するためZnの固体ソ-スを付加し,さらに各固体ソ-スを基板に供給する直前に再熱解離をおこなうようにした。(3)不純物材料の強いイオン性効果の対策として無極性表面がえられる面方位をもつ基板についても実験をおこなうこととした。 これらの方法を採用しP型ZnSの成長実験を繰りかえし,その際考えられる限りの成長条件下で成長をおこなった。それらの結果不純物の添加量を広範囲に変化させる方法は見出したが添加量に比例して結晶性は低下し,通常のMBE法に何らかの補助手段を用いる必要があるとの結論に達した。それらの方法として(1)レ-ザ照射効果を利用すること,(2)アンチフエ-ズドメインの防止や二次元成長促進のための適切な面方位をもった基板の使用を行うことにした。研究室の装置の設置状況の制約のためこれらの研究をZnS用のMBE装置でおこなうためには多額の改造費と時間を要するため独立して実験することにした。レ-ザ光としてはArFエキシマレ-ザを用い基板面としては(100)(111)(110)の三種類について行った実験結果によれば,ArFレ-ザ照射,基板面方位,分子線供給条件を適切にすることにより結晶性が大幅に改善されることを見出した。また種々の実験結果からそのような場合の結晶成長メカニズムに対しても多くの知見がえられた。このような研究経過により本研究は不純物添加およびデバイス応用のための基礎的研究は一応完了した。
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