交付申請書に記載した順に対応させて成果を述べる。 1.装置の改良 ガラス製の反応管はじめ、配管、コック等を取り換え、試料の過熱処理および混合ガスの導入が可能になるようにした。プラズマ励起電圧の影響を避けるため、温度の設定はプラズマを発生させない状態で行った。なお、膜作成後の熱処理には支障はなく初期の目的をほぼ達成できる装置に改良できた。 2.薄膜の試作 反応管のプラズマ発生部に適切な放電が維持される条件を調べた。アルゴン流量80-90cc/min、真空度50-60Paが良く、この条件下ではエチレンガスの流量を10cc/min付近で多少変動しても良好な放電が維持され、その電力も約10wで済むことがわかった。上記の条件により作成された膜について、静電容量の測定値と光干渉膜厚計による膜厚との相関関係から比誘電率として2.5が得られた。この値は通常のポリエチレンフィルムのものに近い。真空中および空気中熱処理の影響を赤外スペクトルから調査したところ、真空中熱処理では二重結合と思われる吸収が認められた。なお、真空中熱処理の場合も、CO基の存在が認められ、真空もれによる酸素混入のおそれがあり、装置の改良中である。 3.絶縁破壊特性の測定 絶縁破壊機構の考察に重要な直流電気伝導を調べた結果では真空中熱処理の方が空気中熱処理より高い導電率を与える。また、電界発光を調べた結果からは、真空中熱処理の場合のみ発光が認められ、赤外スペクトルの結果と合せて考えると、二重結合が関与している可能性が高い。交流絶縁破壊を調べたところ、空気中熱処理膜に比べ、真空中熱処理膜は極めて低い破壊値を示した。また、膜は吸湿性を有し、乾燥時に比べ、導電率が高く、破壊値も低い。 以上の知見を基に、次年度から電気的特性を支配している要因を明確にし、耐電界性のよい膜の作成を目指して研究を行う。
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