研究概要 |
13.56MHzのアルゴンプラズマにモノマ-ガスを導入し、約10Wの電力で1〜2時間にて100〜200nmのエチレン重合薄膜(PPE)およびトリフロロメタン重合薄膜(PPTFM)を作成した。混合ガスによる作成膜の構造制御は微妙な条件の違いが影響し再現性が乏しいことが分った。トリフロロメタンの場合は、反応性の高いフッ素のために作成膜はCーF結合がほとんどであることがIRスペクトル,EPMAの結果から判明した。これらの重合薄膜は8ー10Mv/cmの絶縁破壊の強さを示し、化学重合のものより優れている。しかしながら、PPE薄膜は吸湿によりその破壊値は著しく低下する。PPTFM薄膜ではこの低下は小さい。また、PPE薄膜では、電極効果が見られ、かつ雰囲気の影響も受けることが分った。Al電極では酸素中で大きな電流値が観測され、真空中、窒素中では1ケタ位小さな電流値を示した。金電極ではこの現象は見られなかった。また、PPTFM薄膜ではこのような電極効果、雰囲気効果が明確には認められず、また電流値自体もPPE薄膜に比ベ、1〜2ケタ小さい。紫外線照射により、PPE薄膜は酸化され、薄膜の電気的特性が変化する兆候がみられた。PPTFM薄膜では紫外線照射による特性の変化は認められなかった。しかしながら、PPTFM薄膜の金電極試料では、膜厚が100nm程度より小さいと、その破壊値が低く、低い電圧で電極間が短絡してしまう。この原因を明確にし、改良することは実用上重要であると考えられる。以上の結果より、紫外線照射のない乾燥状態ではPPE薄膜のようなCーH結合構造で十分であるが、高湿下で、あるいは紫外線照射下ではフッ素結合による薄膜が望ましいと考えられる。反応機構を明確にし、よりよい薄膜を再現性よく作成するにはプラズマ自体の調査も重要であると思われる。
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