熱触媒反応を用いて原料ガスを分解することにより、プラズマも光励起も用いることなく、300℃以下の低温で薄膜堆積のできる「触媒CVD法」と名付けた新しい方法により、アモルファス・シリコン(a-Si)、シリコン・ナイトライド(SiNx)の成膜を試み、特に、触媒体材料と膜質の関係に関し検討加えた。その結果、1)a-Si堆積時には、原料ガスのシランを触媒体に吹き付けた直後に、その触媒体表面はシリサイドへと変質し、約30分の膜堆積の後には、それはほとんどシリコンへと変わること、また、この触媒体表面の変質に応じて、触媒体温度の逆数と成膜速度の関係から求まる活性化エネルギーは変化し、この触媒体上での原料ガスの分解反応が単なる熱反応でないことも確認できた。 また、2)a-Siの膜質の触媒体材料への依存性は小さいが、触媒体表面が単なるシリコンに変質した際に作られるa-Siの電子共鳴スピン密度は1×10^<16>cm^<-3>まで低下し、低欠陥の膜が作られていること、さらに、 3)触媒体上では表面移動度が大きく、不活性なSiH_3などの種が大量に作られ、これが良質な膜を形成するための鍵となっていることを明らかにした。表面移動度の大きな種を用いて薄膜を形成すると、集積回路などの微細な凸凹に沿って膜が堆積することが知られていたので、結果3)に基づき、この触媒CVD法を集積回路の層間絶縁薄膜の堆積に適用することを試みた。その結果、 4)触媒CVD法により、SiNxなどの層間絶縁膜用薄膜が容易に堆積できることを確認した。
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