研究概要 |
1.ディジタル信号処理において注目されているものの一つに複素係数ディジタルフィルタがある。他方,複素係数のアナログ回路は虚数抵抗という理論的素子を用いれば実現されることが知られている。本研究の特長の一つはアナログ素子としては実現不可能な虚数抵抗をディジタル回路としてなら実現できることに着目して,新しい周波数シフトが実現されることを示し,その原理を用いれば,遮断特性の鋭いフィルタがきわめて低次のディジタルフィルタで実現されることを示した(文献(3),(11))。 複素係数の回路はこの世の中には存在しない理論上のものと考えられていた。ところで,量子力学ではシュレ-ディンガ-方程式を用いているが,実はその方程式は虚数の係数を含んでいるので,複素係数の方程式である。そこで,シュレ-ディンガ-方程式を満たす振巾を電圧波と仮定し,その電圧波が伝播する現象を表わす等価回路を求めたところ,虚数抵抗と容量(キャパシタ)とが分布している分布線路とできることが示された。その等価回路を用いると,超格子構造で実現されるトンネル共鳴エネルギ-や固有エネルギ-が極めて容易に求められる(文献(7),(9))。 2.音源方向推定のための最大尤度法は他の手法に比べ高分解能であるが,複雑な処理を必要とする。文献(4)は複雑な非線形処理を回避して,極めて少ない計算量で最大尤度法と同程度の推定精度を出すことができるアルゴリズムを提案している。 3.ARMA過程の伝達関数の係数推定は,システム理論やディジタル信号処理で重要な課題である。文献(2),(5),(6),(8),(10),(12)では回路網理論を基にして係数推定やディジタルフィルタ構成を行い,高精度なフィルタや補間的性質をもつフィルタの構成法を求めている。
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