本年度の研究目標は、当初、前年からの数値解析を引続き行い、研究成果をまとめることであった。しかし、本格的な数値解析には多大の時間と費用が必要となることから、焦点を絞り、我々の提案した等価誘電率の解析の特徴を、主としてランダム配置の場合に限って明らかにした。結論として、物体の配置がランダムであるとみなせる場合(その条件は定量的に明らかにされている)には、1物体の誘電率の空間分布を位置変動の確率密度関数によって線形変換し、それによって得られる新たな空間分布をもつ不均質誘電体物体を定め、その前方散乱特性から等価誘電率が求まる。従来問題視されていた物体の分布密度が高い場合には高精度で求まる。数値例は誘電体円柱が多数ランダムに配置された場合の等価誘電率である。 実際の探査法開発に関連して、ランダム媒質中の電磁界の相反関係が重要であるので、それを数学的にマクスウェルの方程式から導出した。更に、標的がランダム媒質によって囲まれている散乱問題を一般的に解析する方法を提案し、コヒ-レント電磁界の散乱特性を具体例で数値的に明らかにした。即ち、標的を無限長の導体円柱とし、それにE波(円柱軸に平行に偏波した波)が入射したとき、コヒ-レント電界の散乱特性に及ぼす乱流の影響を定量的に明らかにした。 以上の結果は、学会誌、国内外の学会等で公表されており、本年度当科研費の研究成果報告書としてまとめられ、研究機関に配布されよう。
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