本研究によって次の結果が得られた。 1.多数の誘電体物体から散乱されたコヒ-レント界は、その物体が周期的配列からの乱れ具合に応じて、近似的に定式化される。 2.配列の乱れが小さくて殆ど周期的配列である、あるいは配列がランダムとみなせるための条件が配列乱れのパラメ-タを用いて与えられ、誘電体円柱に対しては数値的に示されている。 3.等価誘電率は、ある物体の誘電率空間分布の1次変換によって与えられる不均質分布の誘電体(不均質誘電体)物体に対し、コヒ-レント前方散乱振幅を解析することにより得られる。その1次変換は配列の乱れ具合いを示す位置の分布関数である。 4.誘電体円柱がランダム配列でしかも密に分布している場合、等価誘電率が計算され、従来の結果と比べてより合理的かつ精度の高いものが得られている。 5.探査法の開発と関連して、(5.1)ランダム媒質におけるロ-レンツの相反関係がマクスウエル方程式から数学的に導出されている。また、(5.2)ランダム媒質に囲まれた導体標的による散乱問題を一般的に解析する方法が提案されている。 6.その解析法に基づいて、ランダム媒質に囲まれた導体円柱によって散乱されたコヒ-レント界が具体的に計算され、その散乱特性に及ぼすダブルパス効果が数値的に示されている。 探査法の開発には等価誘電率に関する詳細なデ-タが必要であるが、それを得るには例え高速の計算機を用いても多大の時間を要する。詳細な計算解析は今後に残された課題である。
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