研究概要 |
本年度においては,ミリ波平面回路用伝送線路の動作周波数が高周波化していった場合に極めて重要な新規な伝搬現象が生じることについて深く研究を行った。それらは以下の2点にまとめられる。 (1)マイクロストリップ線路に伝搬する新しい複素波とそれが伝送特性にもたらす影響。 超高周波帯での誘電体基板はしばしば異方性を示す。ところで,結晶軸方向とそれに垂直な方向の誘電率をε_<11>および〓とするとき,ε_<11><〓で且つ〓が1.5ε_<11>程度のものでは,低周波帯においてもこれまで見い出されていなかった複素波が伝搬し,しかもその減衰定数は極めて大なることを見い出した。このような複素波は線路に不連続部が存在すると,その部分の損失特性を大きく左右するように働くので,回路設計上,この複素波の振舞いを明確にしなければならない。本研究ではSD面上の根の軌跡等を用いてこの新しい複素波の特性を詳しく検討した。 (2)コプレ-ナ線路における漏洩転移点近傍の特異な分散特性についての検討。 コプレ-ナ線路は3導体系の平面線路である。ところが,外部接地導体が有限,無限の幅を有することにかかわらず,ある周波数以上で漏洩現象が生じることはこれまでの研究で明らかにしてきた。いま漏洩が生じはじめる周波数(転移点)近傍を詳しく調べてみると,漏洩現象が存在すべき部分で何ケ所かこの現象が消滅することを見い出すことができた。これに対して,我々は別の新しい表面波が共振的に発生し,これの漏洩現象と本来のモ-ドからの漏洩波とが打ち消す如き動作(キャンセレ-ション)が生じた結果であると説明してきた。このキャンセレ-ションが生じると,分散特性な極めて複雑になり,伝送特性が悪化する。本研究ではキャンセレ-ションと線路構造との関係を明確にした。
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