緩和発振現象の多くは、固体レ-ザ-、半導体レ-ザ-および色素レ-ザ-などにおいてしばしば観測されるもので、気体レ-ザ-においては、この現象に関する報告はきわめて少ない。後者の気体レ-ザ-において緩和発振が実現されにくい理由は、固体レ-ザ-などの前者のレ-ザ-に比べて後者では、一般にレ-ザ-上準位の粒子の減衰速度が大きく(粒子の寿命時間が短く)、反転分布の回復時間がレ-ザ-共振器における光子の減衰時間よりも実質的に長いことによる。しかしながら、高利得、高出力、高繰り返しパルスを発振など多くの特長を備え、近年その特長が再認識されてきた銅蒸気レ-ザ-(Copper Vapor Laser;CuーVL略記する)ら代表される多くの自己終端型金属蒸気レ-ザ-(SelfーTerminating Metal Vapor Laser;STーMVL)では、レ-ザ-上準位と基底状態の間が共鳴遷移で結合し、共鳴放射の閉じ込め効果によりレ-ザ-上準位の粒子の減衰速度が広範囲にわたって変化するため、緩和発振を生じる条件を満足する可能性がでてくる。 筆者らはごく最近、放電励起のCuClレ-ザ-中に現れる動作温度依存性をもつ振動的なレ-ザ-出力波形変化について、3準位モデルのレ-ト方程式に基づいた小信号近似理論および計算機による数値解析を行い、CuーVLにおいても緩和発振現象を呈することがあることを初めて報告した。 本研究では、STーMVL系を合理的に記述するレ-ト方程式に基づいて議論を展開し、1.STーMVLへの小信号近似理論の適用条件を明らかにした。2.大信号理論に基づいた数値解析を行った。3.STーMVLの過渡特性について、物理的に見通しのよい解析解と数値解析による厳密解との長所を併せもつ大信号近似理論による解析を試みた。これらの解析結果は実験結果を合理的に説明し得るものであることが確認された。
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