1.光双安定半導体レーザの超高速化を目的として、DFB構造の導入を提案し、スイッチング速度向上の可能性を検討した。 (1)DFB構造で定まるブラッグ波長を利得最大の波長よりも短波長側に離調することにより、スイッチオンとスイッチオフの動作を2倍以上に高速化できることを明らかにした。この高速化は、ブラッグ波長の短波長側への離調にともなう微分利得増大の効果によるものである。 (2)活性層へのpドーピングにより高速動作が可能なことを示し、特にスイッチオンには最適ドーピングレベルが存在することを明らかにした。また、pドーピングと離調の併用により一層の高速化も可能である。 (3)本質的に高い微分利得を有する多重量子井戸構造を導入することにより、一層の高速化が達成可能であることを示した。この時、井戸数の制御が重要な役割を果たすことが明らかとなった。 これらの結果をふまえたデバイスの最適化は今後の課題である。 2.強い不均一励起をともなう2電極DFBレーザにおいて双安定波長スイッチングが可能であることを示した。 (1)2電極DFBレーザにおいては、可飽和吸収に基づくヒステリシスの他に、波長スイッチングをともなうヒステリシスが現われることを初めて見いだした。そして、この波長スイッチングは不均一な電流励起によって生じる共振器内の不均一な屈折率分布と、有限な電極間抵抗を通して流れる電流による局所的な励起によって引き起こされることを実験的、理論的に明らかにした。ヒステリシスの発生条件と素子構造、電流注入条件の関係についての詳細な検討は今後の課題である。 (2)波長スイッチングの際には大きなキャリア密度変化が生じないことに着目して、双安定波長スイッチング実験を行った。その結果、過渡応答200〜500psec程度の高速スイッチングが可能なことを実証できた。
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