生産工程における部品の組立や検査などでは、3次元物体の識別やその姿勢の決定に対する要望が多い。これに対して、従来の3次元物体識別法は、対象とする3次元物体が固有の姿勢でほぼ正立しているという制限の元で有効な方法であり、任意の姿勢で置かれた3次元物体への適用は難しいという問題点があった。本研究では、任意の姿勢で置かれた一般曲面物体の識別や姿勢の決定に必要な、任意の姿勢の3次元物体間の照合の問題を、あらかじめ登録された3次元表面形状データと任意の姿勢で得た2次元断面輪郭線データとを照合する問題に分割、簡単化して考えた。照合の結果得られるものは、登録された3次元物体に、与えられた断面輪郭線が存在するかどうか、もし存在するとすれば、それは3次元物体をどのように切った断面か、という情報である。具体的な照合手法は、 1.あらかじめ、登録された3次元物体のから、あらゆる方向で、適当な間隔で断面輪郭線を求め、これの面積、周囲長、ノルム、そして10次までのフーリエ記述子というパラメータ郡を計算、存在しておく。 2.入力として、未知の物体の断面輪郭線が与えられると、これについても同様のパラメータ郡を求め、登録されているパラメータ郡と順次比較していく。 というものである。実験として、3次元形状入力装置よりボトル形状の3次元物体を入力し、これから8094枚の断面形状を求め、そのパラメータ郡を登録した。次にその物体の任意の向きの断面輪郭線を入力し、パラメータ郡を求め登録されたパラメータ郡との照合を行った。その結果、適当な許容誤差の範囲内で、数個〜十数個の候補が得られた。さらに、相互関係が既知の2つの断面輪郭線を入力とすることにより、正しい照合結果が得られ、これにより、本手法の有効性が実証できた。
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