1.理論の展開 申請者は、松尾が提案している微分線形表現系が「スイッチング素子と集中定数素子と電源により構成される回路を含む一般の非線形系の記述」に適している事を示した。 これらの系にフィ-ドバック制御を行うのに次の二つの場合が考えられる。1)一般の制御対象に対する状態変数の線形関数で駆動するスイッチング制御によるフィ-ドバック制御。2)共振負荷の(一組の共役複素根を持つ)の制御対象に対する位相検出器(PD)および電圧制御発振器(VCO)を用いたフィ-ドバックによる共振周波数同調制御。 本研究では2)の場合について解析を行った。そして、繰り返し型短形波入力に対し共振回路特性を与える厳格な公式を得た。これにより、共振回路の特性は正弦波に対するものと繰り返し型短形波に対するものの異なりが分かった。 2.加熱制御系の試作 申請者が従来から提唱していり微分線形表現系をもとにして、2MHzのMOSーFETインバ-タによる誘導加熱系の試作を行った。インバ-タ動作周波数と負荷の直列共振回路の周波数のずれは位相検出器により検出し、これを積分器を通して電圧制御発振器に与え、それによりインバ-タを駆動した。制御系は予期通りに動作し、共振周波数の変化に対し良好な追随特性を得た。実験により得られた知見として、制御動作開始の周波数は共振周波数よりも高い周波数から行うべき事、がある。これは、繰り返し型短形波入力による共振回路の特性公式から理解できる結論である。
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