圧診、触診、打診は問診と並んで最も普遍的医療行為の一つである。しかし、これらの3診の評価は、医師の経験と直観に依存しているのが現状であり、この状況を改めるために本研究を意図した。3診が医師の指による生体表面の力学的感触を通しての、直観的評価であるから、これを電子計測におきかえる方法を模索した。研究成果は裏頁にあげた報告に詳しく述べているが、(イ)生体表面の力学特性の定量化、(ロ)衝撃応答の解析、(ハ)生体表面で観測される微細振動の解明、などにおいて新しい知見を得ることができた。これらの成果を前回提出した実施計画ごとにまとめると次のようになる。 (1)圧診、触診、打診の診断学的意義の明確化について 医師が指を通して得る生体表面の感触は、医師自身も明確に表現できないほど、定量化の困難な対象である。そこで生体表面の力学特性の計測により、力学変数を決定するなど、定量化へ向けて一歩進めた。今後、3診による医師の主観的診断と、力学変数の比較を行いたい。 (2)生体力学特性の時間域解析と周波数域解析の相互依存性の解明について 生体表面の衝撃応答の理論解を誘導することができるようになった。今後、力学変数の調整を通して、打診時得られる衝撃波形をシミュレーションするなど、実用に向けて一歩進める考えである。 (3)体表面機械インピーダンス測定系の設計及び製作について 研究の前半において、測定系の設計、試作を行い、実験に使用している。 (4)3診の定量化について 上述のように計画した各分野ごとにかなりの進展をみることができたが、まだ一気に3診を定量化するには、あまりにも残された未知のことが多い。今後、一歩ずつこれらを解明し、3診の電子計測を完成したい。
|