研究課題/領域番号 |
63550334
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松浦 聖 名古屋工業大学, 工学部社会開発工学科, 教授 (60024189)
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研究分担者 |
小畑 誠 名古屋工業大学, 工学部社会開発工学科, 助手 (30194624)
後藤 芳顯 名古屋工業大学, 工学部社会開発工学科, 助教授 (90144188)
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キーワード | 塑性履歴 / 疲労強度 / 大変形弾塑性解析 / 繰り返し荷重 / 残留応力 / 応力集中 |
研究概要 |
今年度の研究で得られた知見はつぎの通りである。実験解析として応力集中部(切り欠き)を持つ試験片に対し種々の塑性履歴をあらかじめ与え、疲労試験を行なったところ、塑性履歴の比較的小さい試験片に対しては疲労強度は明確な向上を示した。その一方で、より大きな塑性履歴に対しては、いったん向上した疲労強度が低下するという現象がみられた。塑性履歴は、主として疲労亀裂発生寿命に大きく影響しており、亀裂進展寿命にはほとんど関係していないことが明らになった。次に、実験結果の解析的説明を行なうために応力集中部での応力分布状態を弾塑性解析によって求めた。全体としての平均のひずみが小さいものであっても応力集中部では大きく変形しており微小変形にもとづく解析は不適当であるため、大変形弾塑性解析を行なうものとした。弾塑性理論としては、弾性に増分形弾性、塑性にJ2関連流れ理論を用いた。ひずみ硬化則としては、等方硬化、移動硬化をともにとりいれた複合硬化則を用いた。境界値問題に対する数値解法としては有限要素法によった。疲労実験で対象とした塑性履歴をあたえ、それにより応力集中部に発生する残留応力の分布を求めたところ、圧縮残留応力は塑性履歴が大きくなると消失していく傾向が明らかになった。これは疲労実験の結果と非常によく対応するものであった。残留応力は塑性履歴の大きさに最も敏感であるといえるが鋼材のひずみ硬化特性にも依存しており、強い移動硬化を仮定した場合には、除荷においても塑性変形が起こることが認められた。ここで用いた仮定の範囲では、疲労試験程度の繰り返し荷重をあたえても残留応力の消失は認められなかった。実験に即したひずみ硬化特性を考えることにより塑性履歴と疲労強度との関係はより明確になるものと考えられる。今年度は、塑性履歴の疲労寿命への影響についてその支配要因を明確にし、より定量的な評価を行なう予定である。
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