実橋RC床版のひびわれ劣化、陥没破壊は広義の疲労破壊現象であることは定説化している。自動車の走行をシミュレ-トした実験から、これらの劣化・破壊は主鉄筋断面のせん断破壊であることを証明した。しかるに設計法はまだ鉄筋およびコンクリ-トの許容応力度を安全性の基準にした曲げモ-メントに基づいたものであり、実挙動との相違は大きい。また、近年設計法を限界状態設計法に移行させようとの機運は高く、RC床版の設計法もこれに従うべきであろう。このような観点から、道路橋RC床版では疲労破壊を設計上支配的な限界状態であると本研究者は考え、床版の疲労設計法を確立するため本研究課題を企画実施した。研究実施内容は以下のように大きく3種に分類できる。 (1)既存疲労実験デ-タの整理と設計法の模索 (2)疲労則確認のため床版スパンを変えて疲労実験する。 (3)疲労設計のための外荷重である自動車軸重の測定と特性の解明。この3種の研究成果を組み合わせてRC床版の疲労設計法試案を作成した。以下に成果の概要を述べる。 (1)輸荷重走行試験機による既往の実験デ-タが疲労設計に有用なものであり、これらを整理し、次式に示すS-N曲線を設計用に誘導した。log(P/Psx)=-0.0844logN+log1.657。 (2)床版厚、配筋および載荷荷重を同一とし、床版スパンを1.4m、1.6m、1.8mに変化させた3体について輪荷重走行試験機による疲労実験を行い、破壊寿命の相違がせん断力の違いによって説明でき、上記S-N曲線の妥当性を証明した。 (3)都市内幹線道路、および、大型自動車の混入率が高い国道の2箇所で自動車軸重の測定を行い、疲労照査用軸重分布特性を得た。 (4)以上の結果を総合してせん断力に基づく疲労設計法を提案した。
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