研究概要 |
本研究は,海洋コンクリート構造物の疲労特性を将来の陸上構造物のそれとの比較の上で明らかにし,併せて材料レベルの疲労特性から部材レベルの疲労特性,とりわけ疲労寿命を予測する手法を開発することによって,より合理的な疲労限界状態設計法を確立することを目的として計画したものである。本年度の研究においては,コンクリート強度,主鉄筋量,せん断スパン比 (a/d) ,せん断補強筋の有無等を要因に選んだ鉄筋コンクリート (RC) はり約100体について,一定振幅荷重の疲労試験を水中と気中環境下で実施し、以下の知見が得られた。 1) a/d≦4以下のRCはりにおいては,気中で曲げ疲労破壊をするはりであっても水中ではせん断疲労破壊になりやすい。この場合のせん断破壊はスターラップの疲労破断を伴わず,200万回を含む任意の載荷回数での疲労強度は同一仕様の気中はりよりも20〜25%程度低下する。 2) 大きなa/dを想定して曲げスパンのみを水中浸漬したRCはりの疲労試験によれば,気中では曲げにより主鉄筋の疲労破断で破壊するはりであっても水中では圧縮部コンクリートの疲労破壊になりやすく,この場合の曲げ疲労強度は気中はりのそれよりも15%程度低下する。 3) 昭和61年度制定の土木学会コンクリート標準示方書におけいては,材料レベルから部材レベルの疲労寿命を予測する手法として,材料のS-N線式を提示し,とくにコンクリート部の疲労破壊が問題となる構造物に対しては、応力勾配の存在が疲労に及ぼす有利な影響を考慮する係数としてβ=3/4 (矩形断面) を導入している。これら示方書の考え方の妥当性を検討した結果,水中での鉄筋のS-N線式は気中におけるよりも小さな値でもって新たに規定してやる必要のあること,βは3/4と一定値でなく,はり上縁のコンクリート応力比の大きさに応じて変化させてやる必要があること,などの結果が明らかにされた。
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