研究概要 |
1.風化度の大きい試料ほど土構造がゆるむ。この土構造の空隙状態を水銀圧入法およびpF試験から測定を試みた。その結果,風化度の大きい試料は,風化度の小さい試料に比較して空隙量が極めて多い。そして,風化度が大きくなる程ミクロポアの多い偏った分布特性を有することが明らかにされた。一方,電子顕微鏡からも風化した粘土鉱物がセメンテ-ションの作用により、石英や長石粒子の周囲に結合し非常にポ-ラスな構造を示している事実が観察された。 2.浸透現象に直接関与しない拘束水分量は,pF4.2の水分で評価が可能である。この水分量は風化度が大きくなる程増加する。さらに,浸透パラメ-タの推定に重要な因子となることを見い出した。 浸透パラメ-タの内,水分特性曲線は既往の式で評価できるが,不飽和透水係数の場合には、著しい不連則性のために式の適用が困難である。この理由に上述の土構造の影響を指摘した。 3.浸透に伴なう試料のせん断強度を単純せん断試験を行ない検討した結果,風化度の大きい試料ほど強度の低下量が著しい。このような試料に,一定せん断力を作用させつまり斜面の応力状態下で水を浸透させたところ、変形が急激に増大して崩壊する現象を示した。この現象を分析することにより斜面崩壊の機構の解明が可能となった。 4.モデル斜面として風化度の異なる地盤を想定し,入力デ-タに地形条件,降雨量,菱透パラメ-タ,強度定数を与え斜面浸透流解析および弾塑性解析を試み検討した結果,風化度の大きい表層地盤部分に高い間除水圧が発生し大変形が生じる。すなわち,安全率が低下し崩壊する過程を明らかにすることができた。そして,これらの一連の解析手法を組み合わせ,かつ地盤の物性値を的確に推定することにより,崩壊予知法の確立の進展に見通をつけた。
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