本研究において得られた知見は以下の通りである。 1.不飽和土壌の透水係数:加圧型不飽和透水係数測定装置を製作し、黒ボク、砂質シルトの不飽和透水係数と含水率およびサクションとの関係を求めた。この結果、間隙径の大きな黒ボクの不飽和透水係数はGenuchten式で、間隙径の小さな砂質シルトはWesseling式で表示できることを見いだした。 2.岩盤亀裂のモデル化:実岩盤露頭面におけるスキャンライン調査資料を統計的に解析した結果、亀裂長の分布形および亀裂間隔は指数関数よって近似できることを見いだし、亀裂系の空間構造を定量的に評価する新しい解析法を確立した。 3.亀裂性岩盤内の放射性核種の移行:亀裂モデルにおける核種の移行は確立的なものであり、核種の複雑な不規則運動をランダム運動とみなし、モンテカルロ法を用いた核種粒子追跡法により移行予測のシミュレ-ションモデルの開発と構築を行った。 1)亀裂系の分布性状が等方性の領域においては、主流に沿う縦方向の濃度分布の分散(variance)は流下経過時間に伴いほぼ直線的関係が成立し、巨視的縦方向分散係数は一定となる。この値は核種の分子拡散係数のオ-ダからは予測できない大きな値となる。 2)核種の移行濃度分布は、亀裂系の異方性と流速変動に起因する歪みを有する。従って、濃度分布が正規分布形である場合のみ適用できる移流拡散方程式を用いた解法よりも本解法が亀裂性岩盤内の核種の移行予測には有効である。
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