1.現地観測・霞ヶ浦湖心における水温の年間記録から、初夏や梅雨明けに日成層の強度が高まることを確認した。そこで梅雨明けを狙って7日20日から8月8日の3週間に、流れ、水温、水質の鉛直分布を1時間毎に測定した。実際の梅雨明けは7月31日だったので、8月1日から8月8日の1週間に有意なデータが得られた。すなわち、梅雨明け直後のように水温が比較的低く日射が強い状況では、日成層がその日の内に混合せず、翌日新たな日成層が形成されることにより、躍層が2段となる。その結果、下段の躍層が数日に渡って停滞し、底層の溶存酸素が枯渇する共に、湖底から大量のリン酸イオンが溶出した。従って、日成層の混合の具合が底層の水質に著しい影響を及ぼすことが明らかとなった。 2.連行則の理論的検討、風が混合層に成す仕事が吹送流の運動エネルギーとせん断歪エネルギーに転換された後にせん段歪エネルギーの一部がポテンシャルエネルギーに転換されるものとして、連行速度と混合層の速度分布と密度分布を同時に求める理論式を導出した。これを観測データと比較したところ、非常によく一致した。 3.連行速度に関する水理実験、上記理論の妥当性を調べるために、風洞水槽において温度密度流の混合実験を行った。ただし、現地では空間的にほぼ一様で時間的に躍層深さが変化する現象であるのに対し、風洞水槽では時間的には定常で空間的に水理量が変化する。そこで上記した連行則導出の基本仮定を風洞水槽の状況に当てはめ、同様の計算を行って、風洞水槽における連行則を導出した。その結果、理論式と実験データはよく一致した。 4.日成層のシミュレーション、上記の連行則を用いた日成層モデルの基本フレームを構築した。
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