前年度に開発した規則配列された直立堤体構造物まわりの波浪変形の解析法に基づき、矩形堤体などを各種の配列形式および堤体間隔で空間的に配置した場合の波浪制御効果について理論的に検討した。この際、制御効果としては、透過波の波高値および漂砂移動に関係する透過波の波向き特性に着目した。また、このような配列形式に関する検討に続き、波浪の共振現象を利用したより有効な透過波の制御を目的として、堤体の平面形状を共振装置型のものとした場合の波浪制御効果について理論および実験の両面から検討した。一方、上記のような無限の堤体列を想定した結果が、実際場での有限基の堤体で構成される場合に対してどの程度適用できるかについても有限堤体列の算定結果との比較から考察した。これらの結果をまとめると以下のようである。 (1)直立堤体構造物で構成される堤体列の波浪制御効果は、直線配置や千鳥配置などの配列形式にあまり関係せず、開口幅と隣接堤体の中心間距離との比で定義される開口率および堤体中心間距離と波長との比によって最も影響を受ける。そして、透過波を有効に減勢するにはこの閉口率を20%程度以下にする必要がある。 (2)堤体列まわりの平面的な波浪変形は、波高の平面的なrms値および波向き別のエネルギ-比に着目して合理的に評価できる。 (3)堤体軸を作用波の峰線と角度を持つように配置した斜め矩形堤体列を用いて作用波の波向き制御が可能である。この際、傾斜角度としては25度程度が最も有効である。 (4)共振装置型の堤体列を用いて有効に透過波の減勢が行える。そして、共振装置としては、矩形共振水域より半円弧共振水域を有するものの方が優れている。 (5)堤体列が3基以上の堤体で構成され、しかもその列長が波長の4〜5倍程度以上の条件下では、無限堤体列を想定した結果がほぼ適用できる。
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