研究概要 |
揚水を伴う海岸部自由地下水帯における塩分挙動を明らかにするため、砂増モデル実験結果と流両ポテンシャル理論に基づく解析結果とを比較考察した。得られた結論を簡潔に示す。1)理論水面形は、特異なケ-スを除けば実測水面をよく再現できる。2)無揚水の場合には理論内部界面はC/Co=0.25の等濃度線(実測)とほぼ一致する。3)揚水を伴う場合、塩分は本理論で得られる界面よりもさらに内陸部へ侵入し、揚水の結果は濃度分散域の拡大として現われる。 塩分侵入阻止法と塩分分散機構を明らかにするために数年にわたり行ってきた砂層モデル実験から、次のような結論を得た。1)塩分侵入は移流分散現象として解析しなければならない。そのとき、侵入流速と地点の濃度(濃度分布)の精度の高い計測が必須となる。2)本研究では提示した濃度フラックスに基づく定量的評価は有効である。3)失枝開口条件・揚水条件の相違による侵入現象の相違を分散係数値の変化として評価した。 広域地下水の水収支と塩分移動を現地観測資料に基づいて明らかにするため、相関解析、FEM解析などにより総合的に考察した。対称域は吉野川河口域と芦田川河口域である。得られた成果を簡潔に示す。1)タイソン,ウェ-バ-式に基づき約50km^2の吉野川河口域を35領域に分割して、地下水流動量の定量化を行った。その結果は、実測水位等高線の現況を良く再現している。2)節点総数368、要素総数651のFEM解析により、当該地区の塩分挙動の再現計算を行った。分散係数値は0.01〜0.04m^2/dayとなり、他の研究者らが示している他地区の値よりやや小さい。 芦田川下流部河川水質の変化特性に関する課題では、諸般の事情で現地観測が実施できず、福山市水道局の過去の調査資料に基づく検討に止まった。河川自流量が極めて少ないことから、水質の改善はなかなか難かしいと予想される。今後有効な水質改善方策を検討する必要がある。
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