昭和63年度の研究は、空気混入を伴う段落ち流れによる洗掘特性を検討する際に必要となる基礎資料を得る事を目的として、次の三点についての実験を行い、それぞれの特性を明らかにした。 (1)斜め噴流による洗掘、(2)斜め噴流による衝突流れ、(3)空気混入を伴う段落ち流れによる河床衝突流れ。 以下に、上記三点について明らかとなった要点を記す。 (1)について:斜め噴流による洗掘であっても、砂移動機構は鉛直噴流によるものとほとんど同じである。斜め噴流による洗掘の穴の長さや洗掘深は、鉛直噴流による洗掘のそれらと比べると、衝突距離、噴出速度、砂粒径が同じであってもほぼ倍近く増大する。洗掘深の増大は、噴流軸が傾いているため洗掘穴からの浮遊砂拡散のふき上げ角度が鉛直噴流によるふき上げ角度よりも小さくなったことに起因している。又、噴流軸の傾き角が45°の場合、上流側の堆積部はほとんど形成されない。 (2)について:斜め噴流による衝突流れの特性、すなわち、最大流速、流れの幅、底面せん断力等の場所的変化は、鉛直噴流の流れ特性によく類似している。最大流速の変化は、衝突点から最大流速がピークになる地点までの距離(衝突域長さ)及びピークの最大流速を基準量にとれば、一曲線で表される。衝突域の長さは、噴流軸が傾いているため、鉛直噴流による衝突流れでの衝突域長さよりも大きくなる。 (3)について:段落ち流れが下流水面に突入して水中に混入される空気量が、次元解析による考察に基づいて実験式で表された。又、この式を使って、段落ち流れによる衝突流れの特性を整理した結果、それぞれの特性が実験式として表された。 上述の様に63年度の研究目的は一応達成された。今後更に、(1)と(2)の関連、(2)と(3)の関連について検討を進める必要がある。
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