研究課題/領域番号 |
63550382
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研究機関 | 国立公害研究所 |
研究代表者 |
平田 健正 国立公害研究所, 水質土壌環境部, 主任研究員 (30093454)
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研究分担者 |
福島 武彦 国立公害研究所, 水質土壌環境部, 主任研究員 (90124354)
村岡 浩爾 大阪大学, 工学部, 教授 (90029017)
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キーワード | 森林生態系 / 物質循環 / 土壌水質 / 土壌中の物質現存量 / 降雨流出 / 渓流水質 / 渓流水質の起源 |
研究概要 |
筑波森林試験地で得られた降雨時の渓流水質変化から、溶存物質の降雨時流出には2つのパターンのあることが明らかになった。一つは降雨終了後に降雨前の濃度レベルに回復するTypeIとこれを上回るTypeIIである。TypeIにはSio_2、Na、Clが、TypeIIにはNo_3-N、K、Ca、Mgが属する。よく見るとTypeIの物質はSio_2やNaのように植物体の生長に多量には必要とされない物質か、必須元素であってもClのように微量必須元素であるのに対して、TypeIIの物質は、No_3-Nを始めとして全て多量必須元素に属する。 さらに降雨時の渓流水質変化、特に降雨終了後に現れる2つのパターンは、渓流水を構成する流出成分、すなわち中間流出成分に含まれる物質濃度に由来すると予想された。中間流出成分は土壌のごく表層から発生すると考えて、森林試験地内の土壌水質の鉛直分布も調べた。その結果、TypeIの物質では表層土壌で濃度が低く、TypeIIでは表層に高濃度で存在するものが多いことが認められた。深層の土壌水濃度はいずれの場合も渓流水や地下水と大差ないことから、降雨終了後に現れる2つの溶存物質の流出パターンは、この土壌水の流出に起因することが理解できる。 また土壌水質を決定する最大の要因は森林土壌に含まれる物質量であろう。土壌中には様々な物質があり、大気起源の窒素や炭素もあれば、もともと土壌起源のミネラルもある。こうした物質の中で、植物体にとって多量必須元素であれば、森林内の物質循環に組込まれることによって、森林表層土壌に多量に蓄積され、一方物質循環から外れた物質は、植物遺体等の有機物が混入して、次第に土壌中の現存量が減じると考えられる。これらを確認するために、森林土壌の採取・分析を行ったところ、TypeIの物質では表層土壌中の現存量が深層に比べて少なく、TypeIIでは逆に多いことが判った。次年度ではこうした土壌中の物質現存量と物質循環量の関係を明らかにする。
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