本研究は、昭和62年7月に開業した地下鉄南北線により、仙台市の交通形態の変化、及び土地利用の変化を実証的に調査し、地下鉄の影響を総合的に把握することを目的とした。そのため地下鉄開業前(昭和62年6月)に交通実態調査を行い、また開業後1年を経過した昭和63年6月にも同様な調査を実施した。また土地利用の実態調査としては、地下鉄沿線の商業、住宅の床面積の変化、及び地価についても行った。その結果、自家用車利用者の地下鉄への転換は、地下鉄駅周辺の徒歩圏で、かつ目的地が都心部の場合は若干見られたものの、全体としては数パ-セントの値となっている。従って、地下鉄利用者の大部分はバス利用者からの転換であり、結果的にバスと地下鉄との競合関係となっている。 土地利用の変化としては、特に地下鉄の両端のタ-ミナル周辺の土地利用が急激に変化し、また地価も高い水準となった。また長町周辺ではマンションの建築も進んでおり、今後もこの傾向は続くものと思われる。 地下鉄開業による商業立地への影響を定量的に検討するため、Huffモデルによる商業地選択モデルを作成した。これは旧仙台市、旧泉市を73ゾ-ンに分割し、各ゾ-ンの人口、小売業床面積、年間小売業販売額のデ-タを用い、地下鉄開業による時間短縮効果が商業施設の立地に与えた影響をインパクトスタディを使用して検討を行うものである。その結果、地下鉄開業による正の効果が地下鉄の両端タ-ミナルに顕著に表れ、また都心部を含む沿線においても小売販売額の増加が見られた。さらにその開発したモデルにより、現在建設中の地下鉄の延長、計画中の地下鉄東西線についても検討を行った結果、MRTの整備により地下鉄沿線への商業施設の集中がさらに進み、地域内の隔差が今まで以上に進むことが予測された。
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