研究概要 |
平成元年度迄の研究によって,東京とロンドンの両都市圏の交通の効率性,通勤圏の構造,及びそれに影響を及ぼす人口,雇用の分布状況,道路網の整備水準のおよその状況が明らかになった。また,バス交通のサ-ビス水準,及びそれへの影響要因としての道路等の状況,バス路線の状況等の比較が行われた。 平成2年度は,これらの知見を更に掘り下げて分析した。また,これらの知見に基づいて,東京における交通の向上方策,そのための都市整備関係の施策について考察を進めた。その中で,東京の現在のような過度の集積が生じている原因には,土地税制等の制度面があると同時に,日本人の生活行動様式,生活価値観も影響しているのではないかという議論になり,パ-ソントリップ調査の集計により,生活行動の比較検討も行い,ロンドン居住者の通勤時間の短さからくるゆとりある生活,及びトリップの目的構成として,業務目的は少なく,娯楽や社交目的のトリップが多く,生活を楽しんでいる状況が浮き彫りになった。 これらを踏まえて,東京の今後の在り方としては,ロンドンの様に職住の接近,郊外部での就業地開発,幹線道路や鉄道の高速化への関心を高めることに必要性,ロンドン居住者のような生活重視の価値観の浸透によって東京問題の解決も進むこと等の考察をした。バス交通については,東京のバスの走行環境と事業者の両方において,ロンドンと比べての改善の余地が指摘でき,改善の方向が示せた。
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