わが国の航空輸送は、 (1)成田、羽田、関空の整備による容量制約緩和、 (2)航空会社のネットワーク構成戦略の多様化、 (3)地方航空の国際化への要望増大などを受け、大きな変革期に立っている。これらにともなって、新たな分析技法が必要となっているが、わが国の航空輸送システムに関わる研究は従来より体系的にはなされて来なかった。この点を踏まえ、本研究では近年の筆者らの研究成果を総合化し体系化することを考えた。 まず、筆者らが既に開発した航空需要予測モデル(地域航空需要、国内幹線航空需要、国際線航空需要)の改良を新しいデータを用いて行い、総合的な需要予測モデルとした。次にこれらのモデルをサブシステムに持つゲーム論的シミュレーションモデルを開発した。航空市場を支配する少数の航空会社と旅客及び行政当局をトゲーム主体に考えて、幾つかの制度変更に対して航空会社の取る手がどの様に変化するかを調べた。 次に地方空港の国際化の問題を取り上げ、特に旅客需要からみた実現性を調べるためにモデル分析を行った。その際、地方の潜在的な需要を一部取り扱える発生モデルを作成している。 更に、コミューター航空の需要予測に対しては、現存しない交通機関に対する意識調査を用いて需要を予測するための方法を作成して、実際に複数の空港で得たデータに適用している。 また、国内航空の需要予測に関しては、機材と便数の制約から容量制約が顕著な路線がある点を考慮して、容量制約下の分析方法を開発している。最後に以上のモデル開発、分析結果を総合して、航空需要分析技法の体系化を試みている。
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