研究実績について、理論、計算法及び課題の順に以下に整理する。 (1)理論 本年度は寡占市場における空間価格均衡モデルそして分散型空間価格均衡特性分析及びモデルの定式化を試みた。前者について本研究で明らかにされた点は次のようである。(1)空間価格均衡(ク-ルノ均衡)はネットワ-ク均衡と類似の特性をもつ。(2)(1)の特性を利用すればク-ルノ均衡を求める簡便な計算手法を構築できる。(3)空間を考慮したク-ルノ均衡の特性は、そうでないク-ルノ均衡と本質的に同じ特性をもつ。後者については、地域の個々の生産者と集計化し、その利潤最大化行動をランダム効用理論を援用して得られることを明らかにした。さらに、地域の生産関数を定義し、生産容量(短期)を考慮した分散型空間価格均衡モデルを定式化した。このときの均衡問題はワルラス均衡として定式化でき、本研究の提案モデルの解の存在と一意性および安定性についてその特性を明らかにした。分散型均衡モデルは、従来の決定理論的なモデルにくらべ、より現実的な地域間輸送モデルを得ることができ、物流予測モデルとして機能させることができる。 (2)計算法 寡占市場における空間価格均衡モデルの簡便な計算法を開発した。この手法は生産費用が一定の場合のみならず可変的な場合にも適用できる一般的なものである。また、変分不等式問題として定式化された空間価格均衡モデルのサブ問題の解法としても利用できる。 (3)今後の課題 研究計画では構築したモデルを実際の物流予測に応用する予定であったが、デ-タの利用均等の理由で断念せざるを得なかった。今後は実証研究を通してモデルの妥当性を吟味していく必要がある。
|