《昭和63年度》 ・一般化交通均衡問題は変分不等式問題として定式化でき、交通の発生から配分までを統一的に一つの数理計画問題として定式化できる。 ・荷主の輸送サ-ビス行動を組み込むことができ、また、完全競争から独占にいたる幅広い輸送市場を扱うことが可能なため物流予測にも適用できる。 ・ガウス-ザイデル法的な考え方を利用すれば、変分不等式問題は伝統的な交通均衡問題をサブ問題とする数理最適化問題に置き換えることが可能であり、Frank-Wolf法を用いて効率的に解くことができる。ただし、計算時間がかかりすぎ、実用的な規模のネットワ-クに適用するためには計算効率の向上が必要である。 《平成1年度》 ・寡占市場における空間価格均衡モデル、分散型空間価格均衡モデルについて研究した。 ・空間価格均衡(ク-ルノ-)モデルは通常の交通ネットワ-ク均衡モデルと類似の特性を持つ。この特性を利用すればク-ルノ-均衡を求める簡便な計算法を構築することができる。 ・生産者の短期的生産活動をランダム効用理論を援用して定式化することによって分散型空間価格モデルを誘導することができる。分散型均衡モデルは価格情報の曖昧さを取り入れており、決定論的モデルよりも現実的な行動モデルを得ることができる。 ・分散型空間均衡モデルでは、ワルラス均衡によって地域間物資流動量を求めるが、この場合、解の存在と一意性を証明することができる。 ・仮想市場の概念を導入すればグリ-ンハットモデルを用いることができ生産者の市場参入・撤退行動を表現した簡便な計算法を得ることができる。 ・この計算法は生産の限界費用が生産量の関数になる場合にも適用でき、また変分不等式問題のサブ問題の解法としても使用することができる。 《今後の課題》 当初の研究計画では、構築したモデルを実際の物流デ-タを用いて検証するはずであったが、その目的は達成できなかった。今後は実証研究を通してモデルの妥当性を確認していく必要がある。
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