1.研究目的 有機塩素系溶剤の様な揮発性有害有機化合物が地下水汚染に見られるような環境汚染を引き起こし、人の健康に対する影響が懸念されている。廃棄物処分場や土壌層では気・液・固の3相が共存し、そこでの降雨浸透水やガス流れによってこのような有機化合物が大気側に運ばれたり、地下水側に運ばれたり複雑な挙動をする。その機構や輸送式を解明することによってこのような有機化合物のリスクアセスメント・有害性評価に資することが出来る。そこで本研究では揮発性・非イオン性有機化合物としてトリクロロエチレン(TCE)を選び、それの廃棄物への収着現象の平衡論、速度論的な基礎研究を行った。さらにそれに基づいて廃棄物層内におけるTCEの輸送現象の解析を行った。 2.研究成果 (1)等温収着実験を行なうことによってTCEの水-廃棄物間分配係数を求めた。廃棄物への分配率は底質や土壌のそれより大きいこと、収着(分配)は固形物中の有機物へのTCE溶解であると考えられることなどを明らかにした。(2)上記の測定の改良法を示し、各温度におけるヘンリ-定数(ガス-湿潤廃棄物間分配係数)を求めた。(3)TCEのガス-湿潤廃棄物間の分配係数を求め、それが(1)、(2)で求めた分配係数で推測できることを示した。(4)水中TCEの廃棄物への収着速度及びガス中TCEの湿潤廃棄物への収着速度実験の方法及びその解析法を明らかにした。(5)(4)の理論に基づきカラム実験を行い、収着速度機構やそのパラメ-タを明らかにした。また、廃棄物によるTCE分解を明らかにした。(6)以上の基礎研究を基に各種の廃棄物埋立層内におけるTCEの挙動を解析した。(7)同様に、高濃度TCE含有廃棄物が不当に持ち込まれないようにするための監視レベルの設定、及び持込み許可出来る低濃度TCE含有廃棄物の基準などを明らかにした。
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